希少がんについて
[最終更新日 : 2021年1月20日]
希少がんとは
希少がんは、欧州では「新規に診断される症例の数が10万人あたり年間6例未満のがん」と定義されています。一方で、長らく本邦では、希少がんという用語の定義はありませんでしたが、2015年の厚生労働省の検討会によって、「人口10万人あたりの年間発生率(罹患率)が6例未満のもの」、「数が少ないがゆえに診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きいもの」と定められました。この定義に従うと、骨の肉腫、軟部肉腫、脳のグリオーマ、眼の腫瘍、中皮腫、神経内分泌腫瘍、小児がん、など200種類近い悪性腫瘍が希少がんに分類されます。個々の希少がんは、いずれもがん全体の1%にもみたないまれな腫瘍ですが、すべての希少がんをあわせると、がん全体の15~22%にも達します。
当院の希少がんセンター
国立がん研究センターは、これまでもわが国では最も多くの希少がんを診療する施設として、研究及び診療を推進してきました。しかし、これまでは個別の臓器を診療する科において、それぞれに診療していましたが、世の中のアンメットニーズである希少がんの診療と研究をより推進するため、国立がん研究センター横断的な組織として2014年6月希少がんセンターが設立されました。希少がんセンターのミッションは、希少がんの最新、最良の診療を行うこと、最先端の研究、治療開発を推進すること、さらに実際の診療・研究活動を通して、希少がん医療の課題を明らかにし、解決してゆくことです。2018年4月からは、国の希少がん対策を担う希少がん中央機関の中心的な役割も果たしています。
腫瘍内科も、もともと、全身に発生するあらゆる腫瘍の最適な治療方針を検討して患者さんにご案内する、コーディネーターとしての役割に加え、薬物療法を主に担ってきました。そのため、希少がんセンター発足時から、腫瘍内科の複数のメンバーが希少がんセンター併任となり、希少がん診療及び研究を行っています。
腫瘍内科の担当する希少がん
腫瘍内科は、担当科が良くわからない、疾患の最適な治療方針を検討するため、いずれの臓器に発生した場合でも窓口として対応する可能性があります。一方で、当科では、特に手術を検討する場合の手術前後の薬物療法(抗がん剤治療)や、切除が不可能な病状の方の薬物療法(抗がん剤治療)を特に行っております。
具体的な疾患としては、全身の肉腫(軟部肉腫、骨の肉腫)、乳がん(希少な乳がん)、婦人科がん、腺様嚢胞がん、原発不明がん、胚細胞腫瘍、尿膜管がん、副腎皮質がん、褐色細胞腫、パラガングリオーマなどを扱っています。2018年度の実績としては、年間およそ600名程度の希少がんの患者さんを診療しています。
希少がんは患者さんの数が少ないことから、その他患者数が多いがんと比較して、最適な治療法に関したデータが少ないことは確かです。しかし、私たちは、その時点で入手可能ながんに対するデータ(エビデンス)をもとに、最適な療養に向けた検討を、患者さんと共に行っています。